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​岳温泉熊野神社
と御神木
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神木のコナラ -Adam and Eve in Japan-

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伊耶那岐命(イザナギノミコト)と伊耶那美命(イザナミノミコト)という名前をご存じですか。日本神話の中に出てくる、この国をつくったとされる神々の名前です。まさに日本のアダムとイブともいえる存在で、古事記や日本書紀などの歴史書にも登場する神々です。

天地創造 -The beginning of Japan-

まだ、日本という国がクラゲのように海を漂っているとき、イザナギとイザナミ、男女二人の神は夫婦となり、次々と子供を産み育てていきます。

先ずは、国産みとして、四国、隠岐の島、九州、壱岐、対馬、佐渡、本州を。続いて、吉備の児島、大島、女島、知訶島、両児島を産み出しました。

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イザナギとイザナミは更に神産みを始めます。石、木、海、水、風、山、野、火など、神羅万象の神々を産み出していきます。ところが突然、二人に不幸が襲います。火の神を産んだイザナミは陰部に火傷を負い、そのために病にかかり亡くなってしまうのです。

破壊と再生 -Phoenix-

イザナミのことが忘れられないイザナギは、黄泉の国(死後の世界)まで追いかけていきます。

二人は黄泉の国で再会を果たしますが、ミザナミは、もう元の世界には戻れないことをイザナギに告げます。二人は、ここで永遠に別離することになります。

 

このとき、二人の間で交わされた印象的な言葉があります。

 

イザナミが言います。「愛するイザナギ、お前の国の人々を1日1000人殺してやりましょう。」

するとイザナギは言い返しました。「愛するイザナミ。そうするのなら、わたしはこの国の人々に1日1500人の子供を産ませるでしょう。」

 

イザナミは予言しているのです。1000人が亡くなるような災いが毎日のように起きるだろうと。それは、自然災害であったり、戦争だったりするのでしょう。それに対して、イザナギは毎日1500人の子供を産めばいいという解決策を提示しています。子供を作り続けることができれば、この国が滅びることはないと。

 

この二人の神々のやりとりには、実は重要な意味がありました。その後、この国を襲った様々な困難、その苦境を乗り越えるための啓示が隠されていたのです。

新しい生命を産み育てる。

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出産の秘密 -The secret of childbirth-

イザナミとイザナギは国産み、神産みを成し遂げ、この国の礎を築き上げました。では、どうやってそれを成し遂げたのでしょうか。

 

イザナギとイザナミの二人は、お互いの身体に異なるところがあることに気づいていました。イザナギの体にはイザナミにはないものがあり、イザナミの体にもイザナギにはないものがある。

二人は、お互いに無いものを補完し合い、合体することにより、新たな命を産み出せることを知っていたといいます。そのような“まぐわい”の形をとることで国産み、神産みを果たしたのです。

合体した樹木 -The tree of Izanagi and Izanami-

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福島県二本松市の岳温泉神社は、千年以上も昔、西暦800年代には中央にも聞こえる古社であったと言われており、格式の高い神社に位置づけられています。古くから神仏集合し、現在も陽日温泉神、熊野神、安達太良明神、甑明神と共に薬師如来が祀られています。

また、熊野神はイザナギ、イザナミの子であるハヤタマオが祭神であり、この国の成り立ちと深い関わりのある神社でもあります。

 

この神社の片隅に不思議な樹木が生きています。もともとは二本の木であったコナラ(木楢)が、生育の過程で合体し、一本の木となってそびえています。お互いに無いものを補完し合い、合体する。イザナギとイザナミの国産み、神産みの形を象徴する、二人の形見のような樹木なのです。

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縁結び -Complement each other-

私たち人間は一人きりでは生きていけません。なぜなら、自分には無いものがたくさんあるからです。無いものを補完し合うために他の誰かとつながる必要があります。つまり、私たちは生きるために、誰かと、何かと、縁を結ぶことを宿命づけられているのです。

 

岳温泉神社から2㎞ほど上ったところに、JICA二本松訓練所があります。毎年、延べ千人近くの若者が全国から集まり、ここで70日間の研修を受け、アフリカ、東南アジアの途上国に派遣されていきます。

若い男女が長期間にわたり訓練を受けますから、当然、ここで何組かのカップルが生まれます。二本松訓練所ではすでに千組近いカップルが誕生したのではないかと言われています。

二人でこの岳温泉神社に詣で、縁が結ばれたことを報告すると、帰国後に結婚することができるという言い伝えが訓練所にはあるようです。

 

また、ここから海外へ派遣される隊員一人ひとりが皆、自分には何かが足りていないことを否応なしに知っています。足りない何かを満たすために、誰かのために何かをしようとしているのです。そして派遣される途上国には技術や知識、人材が足りていません。つまり、お互いに足りていないものを補完し合うために縁を結んだ一人と一国なのです。

 

このように岳温泉神社、そしてイザナギとイザナミの形見であるコナラの神木には、縁を結ぶ不可思議な霊力が宿っているようです。ただし、誰でもこのパワーに触れられる訳ではありません。自分に足りていないものが何かをはっきりと認識した者だけが、それを補完する誰かと、何かと、縁を結ぶことができると言われています。

 

この神木の前に立ち、自分に足りていないものは何か、思いを巡らせてみてください。

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